法相「慎重な検討を加えた上で命令」 1人に死刑執行
法務省は12日、死刑囚1人の死刑を執行したと発表した。
執行されたのは、横浜中華街の料理店経営者を射殺するなどした熊谷徳久死刑囚(73)=東京拘置所。
死刑執行は4月26日に2人に執行して以来、約5カ月ぶり。
昨年12月の政権交代で谷垣禎一法相が就任してから、3度目の執行で、計6人となった。
谷垣法相は執行後の記者会見で
「誠に身勝手な理由から被害者の貴い人命を奪った残忍な事案。確定判決を前提に、再審にあたる事由の有無など、慎重な検討を加えた上で死刑執行を命じた」と述べた。
法務省刑事局によると、11日時点で未執行の確定死刑囚は133人。
今回の執行により、132人となったが、依然として過去最多に近い水準が続いている。
確定判決などによると、熊谷死刑囚は2004年5月、中華料理店経営の清水文男さん(当時77)を横浜市中区の自宅で待ち伏せして射殺し、現金約43万円などを強奪。
また、翌6月には、駅員が運ぶ売上金を強奪しようと計画、渋谷駅の地下1階の通路で男性駅員(同32)に発砲して重傷を負わせ紙袋を奪うなどした。
強盗殺人罪などに問われたが、06年4月の一審・東京地裁判決は、死亡した被害者が1人であることなどから無期懲役の判決を言い渡した。
一方、07年4月の二審・東京高裁判決では、「直ちに死刑を回避すべき事案ではない」として一審を破棄、死刑判決を受けた。
熊谷死刑囚は上告したが、11年3月、最高裁が上告を棄却した。
2013/9/12 日本経済新聞
前回の死刑執行
浜崎勝次(64)・宮城吉英(56)、死刑執行
奈落―ピストル強盗殺人犯の手記クリエーター情報なし展望社
熊谷被告は1996年1月、横浜市中区で銀行嘱託社員を工具で襲い、小切手を奪った強盗傷害事件で実刑判決を受け、2004年4月に出所したばかりだった。
この事件を含め過去に10回、懲役刑を受けている。
横浜中華街店主銃殺事件他
犯行日時
2004年5月29日/6月23日
無職熊谷徳久被告は2004年4月に窃盗罪で服役していた刑務所を出所すると、ディスコの開店資金を得るために強盗を計画。
2004年5月6日、熊谷被告は東京駅のキヨスク集金事務所を拳銃で襲撃するつもりだったが、目的の集金所を見つけることができず、腹いせのため午後5時頃、東京駅地下3階の機械室に灯油をまいてライターで放火。廃棄するため置いてあったエアコンやペンキ缶などを焼いた。この火事で、東京駅地下5階にある総武快速・横須賀線ホームに白煙が立ちこめ、乗客約300人が避難する騒ぎになった。なお、熊谷被告が思い込んでいたキヨスクの集金事務所というものは存在しない。
5月27日、熊谷被告は現金を奪おうと横浜市内の警備会社事務所を襲ったが、何も奪うことはできなかった。
5月29日深夜、熊谷被告は横浜中華街の中華レストラン経営者(当時77)を横浜市中区の自宅前で待ち伏せし、頭を拳銃で撃ち殺害。経営者が持っていた売上金約44万円入りのバックを奪った。
6月23日朝、熊谷被告は東京メトロ渋谷駅構内で駅員(当時32)の腹を拳銃で撃ち、右足まひなどの後遺障害を残す重傷を負わせ、持っていた洗面用具などの入った紙袋を奪って逃走した。
熊谷被告は6月26日、渋谷駅銃撃事件について警視庁に出頭。その後、横浜市の強盗殺人事件で家の周辺に残された指紋が一致したこと、銃弾に残された線条痕が酷似していることから神奈川県警が追求、犯行を自供した。出頭当時、所持金は数百円だった。