正恩氏、類例なき非情…今後の粛清「万単位」か
北朝鮮で、ナンバー2の張成沢前国防委員会副委員長(67)の粛清は、張氏が解任からわずか4日後に処刑される異例の展開となった。
金正恩第1書記は、叔父の張氏でも容赦なく処刑する「恐怖政治」を見せつけ、張氏勢力を抑え込む狙いとみられる。
韓国の柳吉在統一相は13日の国会答弁で、今回のような迅速な処刑は「北朝鮮の歴史で類例がない」と驚きを隠さなかった。
消息筋によると、金日成主席が1950年代、政敵をスパイ罪で処刑した事実を公表した例があるが、
張氏のように法廷写真を公開するなど、人格をおとしめる手法は取らなかった。
金正日総書記は70年代以降、権力基盤を確立するために、叔父で後見人格だった金英柱副首相や義母、いとこを権力中枢から追いやったが、
政治生命を奪うだけにとどめた。
北朝鮮メディアは張氏を「犬にも劣る醜悪な人間のクズ」と罵倒しており、正恩氏の非情さが浮き彫りになっている。
聯合ニュースなど韓国主要メディアは、北朝鮮が公開した法廷写真で、張氏の左目などが腫れており、暴行で自白を強要された疑いも指摘した。
張氏に連なる人脈は、政権上層部から軍、中朝の経済協力に従事する企業家にまで及ぶとされる。
北朝鮮での粛清は家族に及ぶのが通常で、人数は「万単位に上る」との指摘がある。
13日付の朝鮮労働党機関紙・労働新聞(電子版)は1面の論説で、張氏処刑で「革命の敵に大きな恐怖を与えた」と強調した。
(12月13日(金)21時11分読売新聞)
張成沢氏処刑 残虐な政権に警戒強めよ
多くの人が慄然としたのではないか。北朝鮮の金正恩第1書記が叔父の張成沢氏を処刑した。
更迭から4日後、特別軍事裁判で死刑判決が下され即日執行されている。
米国家安全保障会議(NSC)のベントレル副報道官は「北朝鮮政権の極端な残虐さを示す新たな事例だ」と非難した。
北の体制の残虐性とともに若き独裁者の予測不能性にも目配りし、その暴走を警戒、阻止していかなければならない。
判決は、張氏が米韓両国の政策に便乗してクーデターを企図し、
その犯行が審理過程で百パーセント立証されて、張氏も罪状を全面的に認めた、としている。
張氏は金氏一族の一員で、正恩氏の事実上の後見役を務めてきた。そんな実力者の即日処刑は、独裁国家でもそうはあるまい。
正恩氏は、独裁体制維持のため恐怖心を国民に植え付ける必要があったのか、国営メディアは口を極めて張氏を罵倒している
正恩氏は2年前、金正日総書記の死去に伴い、権力を世襲した。権力継承への長い準備期間を経て金日成主席が築いた王朝を継いだ正日氏と違い、
正恩氏は現在30歳前後で経験不足は否めない。
そのせいか、北朝鮮では正恩氏の代になってから、一段と常軌を逸した動きが目立っている。
昨年12月に長距離弾道ミサイルを発射し、今年2月には3度目の核実験を強行した。
その後、さらなるミサイル発射をちらつかせて国際社会を挑発し、
朝鮮戦争の休戦協定を白紙に戻すと宣言したり平壌の外交官に退避を要請したりして、「戦争状態」を煽った。
これに対し、米国がイージス艦2隻を西太平洋に派遣し、B52戦略爆撃機、F22ステルス戦闘機を米韓合同演習に参加させ、
北を牽制(けんせい)する事態となっている。
正恩氏はスキー場など娯楽施設の建設による観光開発に熱心かと思えば、米国人観光客をゆえなく拘束し、
経済再建に力を入れるかと思えば、韓国と共同の開城工業団地を一時閉鎖に追い込んだ。
厄介だが、金正恩体制下では予測不能なことが起き得るとの前提に立ち、日本にとっては最重要な拉致問題を含めて、北朝鮮に対応していくほかない。
張氏処刑で軍が実権を握ったとの見方も示され、内部抗争が進行中の可能性もある。軍の動きは特に注視していく必要がある。
(2013.12.14 産経ニュース)
北朝鮮が張成沢氏を死刑、反逆罪で即日執行=KCNA
[ソウル 13日 ロイター] - 朝鮮中央通信社(KCNA)によると、北朝鮮は、金正恩第1書記の叔父である張成沢・元国防委員会副委員長の特別軍事裁判を開き、張氏に反逆罪で死刑判決を下し、刑を即日執行した。
KCNAによると、張氏と好ましくない勢力は派閥を形成し、国家を転覆させようとした罪を犯した。
北朝鮮は今週、張氏を「犯罪行為」のため全役職から解任していた。
労働党機関誌の労働新聞は13日、手錠をかけられた張氏が制服を着た護衛に付き添われている裁判の様子の写真を掲載した。死刑がどのように執行されたかは明らかでない。
KCNAは、張氏は長期にわたり好ましくない政治的野心を持ち続け、金日成氏と金正日氏の生存中はそれを隠していたが、革命世代が交代する歴史的な転換期において自身の野心を実現させる適切な時期だと判断し、本性を現しはじめた、と報じた。
張氏の側近が韓国に亡命したとの未確認の報道も飛び交った。韓国の情報当局はそのような亡命は認識していないとしている。
張氏は解任されるまで国防委員会副委員長を務めていたほか、労働党政治局員だった。故金正日総書記の妹の金慶喜氏の夫で、金第1書記の後見役として金氏の権力基盤構築を支援するとみられてきたが、同時に実力者だった張氏は金氏にとって最大の脅威でもあった。
北朝鮮情勢の専門家、マイク・マッデン氏は「(張氏は)北朝鮮でクーデターを起こす能力を持っていた」とし、国家安全保障など北朝鮮政権の重要部分について知り尽くしていたと指摘した。
韓国大統領府は北朝鮮の動向について協議するため、閣僚会議を開催。
米国は北朝鮮の動向を注視し、域内の同盟国と協議していることを明らかにした。
ホワイトハウス国家安全保障会議のベントレル報道官は「(死刑執行が)確認されれば、北朝鮮体制の過剰な野蛮さを示す新たな例となる」と述べた。
(2013年 12月 13日 ロイター)