堺市で象印マホービン元副社長ら2人を殺害したとして、
2件の強盗殺人罪などに問われた西口宗宏被告(52)の裁判員裁判の判決公判が10日、
大阪地裁堺支部であり、森浩史裁判長は求刑通り死刑を言い渡した。
(時事通信)
平成23年に堺市で主婦と象印マホービン元副社長を相次いで殺害したなどとして、強盗殺人罪などに問われた無職、西口宗宏被告(52)の裁判員裁判判決公判が10日、大阪地裁堺支部で開かれ、森浩史裁判長は被告への主文言い渡しを後回しにし、判決理由の朗読から始めた。
求刑は死刑。
また、弁護側は死刑の違憲性を主張していたが、森裁判長は「憲法に違反しない」と述べた。
西口被告は起訴内容を認めており、量刑が争点だった。
検察側は「まれにみる凶悪な犯行で、命をもって償わせることはやむを得ない」として死刑を求刑していた。
一方、弁護側は「絞首刑は首が切断される可能性があり、残虐な刑罰を禁じた憲法に違反する」と主張。
元刑務官らの証人尋問などを行ったうえで「無期懲役は事実上の終身刑。生涯、反省や贖罪の日々を送らせることが妥当だ」として無期懲役を求めていた。
判決などによると、西口被告は23年11月5日、堺市南区の駐車場で、同区の主婦、田村武子さん=当時(67)=を車内に押し込み、現金約30万円などを強奪。食品包装用のラップを田村さんの顔に巻いて窒息死させたうえ、大阪府河内長野市の山中で遺体を焼き、骨片などを遺棄した。
さらに、同年12月1日、堺市北区の象印マホービン元副社長、尾崎宗秀(そうしゅう)さん=当時(84)=宅に侵入。現金約80万円やクレジットカードを奪い、尾崎さんの顔にラップを巻いて窒息死させるなどした。
(産経新聞 3月10日)
堺市南区の主婦、田村武子さん(67)失踪事件で、田村さんを殺害し、遺体を遺棄したことを認めている西口宗宏容疑者(50)=窃盗容疑で逮捕=が、「田村さんを脅してキャッシュカードの暗証番号を聞き出した」などと供述していることが15日、捜査関係者への取材で分かった。
また西口容疑者が田村さんと、象印マホービン元副社長、尾崎宗秀さん(84)から現金やキャッシュカードを奪ったことも認めていることが判明。
捜査関係者によると、西口容疑者は田村さん失踪翌日の11月6日午後3時前、堺市北区の銀行ATM(現金自動預払機)で、田村さんのカードを使い、預金残高のほぼ全額にあたる5万円を引き出したとされる。
田村さんの車には血痕が残っていたほか、フロアマットなどがなくなっており、捜査1課は、激しい暴行で多量に出血していたことを隠すため、西口容疑者が持ち去ったとみている。
3600万円の火災保険金目的での放火の罪で入所し、今年7月に仮釈放→女性と同居→堺の女性不明事件起こす→象印元副社長を殺害を示唆。
犯罪者に更正の機会を与え仮釈放したら、すぐに二人を殺害。仮釈放を決めた役人の責任は大きい。
車に押し込んで暴行し、五万円を生活費に使い切ったのですぐ次の犯行に及んだのかもしれない。
また主婦の遺体をを遺棄した場所に後日戻って、遺体に火をつけたと話している。
平成23年に堺市で象印マホービン元副社長と主婦を殺害し現金を奪ったなどとして、強盗殺人罪などに問われた無職、西口宗宏被告(52)の裁判員裁判で、検察側は2月26日、西口被告に死刑を求刑した。
別の事件で服役して仮釈放後、わずか4カ月で及んだ残虐な犯行。
遺族は法廷で「生きたまま溶鉱炉に突き落としたい」と声を絞り出し、検察側も論告で「鬼畜の所業で命を持って償わせることはやむを得ない」と指弾した。
極刑回避を狙う弁護側は死刑の違憲性を裁判員に訴えようと、元刑務官らの証人尋問で「絞首刑は残虐」などと主張したが、裁判員からの質問はゼロ。
異例の戦略は果たして裁判員に響くのか。
2月26日、大阪地裁堺支部の法廷。被害者の主婦、田村武子さん=当時(67)=の長男は、意見陳述で収まらない怒りをはき出した。田村さんの夫や象印マホービン元副社長、尾崎宗秀さん=当時(84)=のめいも意見陳述に立ち、西口被告を「極刑にしてほしい」と述べた。犯行の態様や動機をみると、峻烈な処罰感情はもっともだ。
起訴状やこれまでの審理によると、西口被告の最初の犯行は23年11月5日夕。
堺市南区の店舗に併設された駐車場で、買い物帰りの田村さんが車に乗り込もうとするところを車内に押し込み、手足を粘着テープで緊縛。
別の場所まで車ごと連れ去った上で、現金約30万円とキャッシュカードなどを奪った。
さらに、田村さんからカードの暗証番号を聞き出すと、顔に食品包装用のラップフィルムを何重にも巻き付け、窒息死させた。
遺体をいったん隠した後、同7日から9日にかけ、大阪府河内長野市内の山中で、遺体をドラム缶に入れて骨になるまで焼却。
骨片を周辺の地面にばらまいた。
12月1日朝には、堺市北区の尾崎さん方に宅配便の配達員を装って訪問。
応対に出た尾崎さんを突き飛ばし、粘着テープや荷物梱包(こんぽう)用の結束バンドで縛り、現金約80万円やクレジットカードを強奪。
暗証番号を聞き出し、顔にラップを巻いて、窒息死させた。
いずれの事件でも、奪ったカードでさらに現金を引き出したり、引き出そうとしたりもしていた。
悪質なのは犯行態様だけではない。
西口被告は16年に火災保険金目的で自宅に放火したとして、現住建造物等放火罪で実刑判決を受けて服役。
23年7月に仮釈放が認められ、滋賀刑務所を出た。
出所後は、学生時代からの知り合いである堺市内の内妻宅で同居。
就職が仮釈放の条件だったが、働くことはなかった。
にもかかわらず、同9月には内妻や保護観察官に「仕事を始めた。10月までには135万円を用意できる」と嘘をついた。
「嘘がばれると、内妻に見放される上、仮釈放も取り消され、刑務所に戻るはめになる」。
そう考えた西口被告は、10月上旬から堺市内の百貨店や商業施設を転々とし、裕福そうな人を物色。
11月5日に高級車で1人買い物に来ていた田村さんを襲った。
しかし、田村さんから奪った現金は、カードで引き出した分を含めても約35万円。
西口被告は妻らに、「11月末までに180万円の金が入る」などと新たな嘘をついた。
そして、嘘が発覚しないよう以前からの知り合いで、金持ちだと思っていた尾崎さんを殺害し、現金を奪った。
裕福な高齢者や女性を狙った凶行。
検察側によると、西口被告は放火事件の服役中、これらの大まかな犯罪計画を立てていたといい、
論告では「本来なら反省を深めるべき期間であり、法律を守ろうとする気がまったく認められない」と指摘した。
仮釈放中で金目的という動機、別々の機会に殺害された2人の被害者…。
被告の刑事責任能力にも問題はなく、判例に照らせば、死刑は免れない凶悪事件だ。
そこで、死刑回避を狙う弁護側は、死刑の違憲性を主張。「死刑や無期懲役の実態を裁判員に分かってもらった上で、本当に死刑が必要か考えてもらいたい」として、元刑務官で作家の坂本敏夫さん、立命館大産業社会学部の岡本茂樹教授(犯罪心理学)の2人を証人申請した。
裁判所に認められ、2月24日に証人尋問が行われた。
死刑執行に立ち会った経験がある坂本さんは「死刑囚は恐怖の毎日を送っていると思う。一番気をつけているのは自殺」「死刑囚が執行を知らされるのは当日朝で、誰が執行されるかの順番は分からない」などと証言。その上で、絞首刑の執行の様子について「開閉式の床が開き、(受刑者は)少なくとも4メートルは落下する。心臓停止後、蘇生(そせい)させないように5分間は首をつったままにする」と説明した。
さらに「命で償うというのもあるが、(死刑にすると)税金を使いっぱなしになる」と指摘。「(無期懲役囚らのように)刑務作業で得たお金などで罪を償うことが、遺族の方のためになると思う」などと死刑に否定的な見解を示した。
受刑者の更生を支援している岡本教授は、無期懲役囚について「仮釈放をもらうために懲罰を避けたいと考え、刑務官らに言われたことに従うだけ。自分の感情を抑制したロボットのような生活を送る」と表現。「死刑と無期で雲泥の差があるとは思わない」と述べた。
また、無期囚と長年交流した経験を踏まえ、「無期囚は当初、先の見えない恐怖で『死にたい』と考えるが、そのうちに被害者の苦しみも理解する」として、生きて償うべきとの考えを述べた。
ほとんどが弁護側の質問で、検察側の反対尋問はわずか。裁判員からは質問は出なかった。
2月26日の最終弁論でも、弁護側は被告の反省や更生可能性などの事情とは別に、約1時間かけて“死刑違憲論”を展開。裁判員に無期懲役を求めた。
一方、直後に裁判長から「最後に何か言っておくことはありませんか」と問われた西口被告。「遺族の方の意見陳述を聞き、自分がどれだけひどい人間か痛感した。私に対する罰は、遺族が望んでいる極刑が当然の報いだと思う」と述べ、頭を下げた。
さまざまな思いや主張が交錯した公判に、裁判員はどんな結論を出すのか。判決は3月10日に言い渡される。
(産経新聞 3月1日)
象印マホービン元副社長・尾崎宗秀さん(享年84)殺害事件が急展開を迎えている。11月に行方不明となった歯科医の妻・田村武子さん(67)のキャッシュカードを使用していたとして逮捕された西口宗宏容疑者(50)が、尾崎さん事件との関連を疑われているのだ。
西口容疑者は少年時代から母と2人で尾崎さん宅の向かいに住み、尾崎さんとは40年来の付き合い。子どもがいない尾崎さんは、彼を息子同然に可愛がっていたという。温厚な母のもと、裕福な家庭に育った西口容疑者。当時の西口家について、近所の住民はこう話す。
「お母さんは文化住宅を持っていたりして家賃収入があって、働かんと家にずっといるようやった。家も100坪くらいの土地があり、株でもけっこう稼いでいたみたい」
西口容疑者は地元の高校を卒業し、建設関係の会社で働き始める。その後、30代で独立するも失敗。多額の借金を抱えていたようだが、無職にもかかわらず、5万円以上するブランド服を娘に着せるなど、浪費癖が目立っていた。
「’99年にお母さんが亡くなって遺産をもらったみたい。本人が『遺産は7千万円の預金と不動産や』と言っていたそうや。その前後からあの子の表情が険しくなっていった。目がつりあがったような顔になっていって、生活はぐんと派手になった」(前出・近所の住民)
だが、それも3年足らずで使い切ってしまったという。その後、3千600万円の保険をかけた自宅を放火したとして04年に逮捕された西口容疑者。仮釈放されたのは今年8月。尾崎さんが発見される前日、彼が書きこんだと思われるサイトにはこんな記載があった。
[今日も根性出んかった。明日こそは絶対! 確実に!!]
象印元副社長・尾崎宗秀さん 西口容疑者をかばっていた
急展開がつづいている象印マホービン元副社長の尾崎宗秀さん(享年84)殺害事件。西口容疑者は、尾崎さんとは40年来の付き合いで、少年時代から母親と2人で尾崎さんの向かいに住んでいた。
「母子家庭だった西口のことを、尾崎さんは僕、僕と呼んでとてもかわいがっていた。尾崎さんには子どもがいなかったから、息子同然におもっていたのかもしれん。家族ぐるみで仲がよかった」と語るのは、尾崎さんと交流があった自治会長の森昌弘さん。
当時の西口容疑者について取材したところ、聞こえてきたのは「人懐っこくてかわいらしい」という印象だ。彼の母が亡くなったあと、西口容疑者は3千600万円の保険をかけた自宅を放火したとして04年に逮捕されている。
そんな彼の事を最後まで信じ続けた人がいる。それは、他ならぬ尾崎宗秀さんだった。
自治会長の森昌弘さんはこう語る。「放火犯として疑われていたころ、彼のことを尾崎さんは『西口がそんなことするはずがない。彼は無実や』とかばっていました。それだけに、彼が逮捕されたときの落胆ぶりは察するに余りあります」
12月1日に尾崎さんは変わり果てた姿で発見された。自宅には、争った形跡はなかったという。
森さんが続ける。「普通、西口みたいな放火犯が戻ってきたら、家には入れない。でも、もし西口が『心を入れ替えます!』と頭を地につけるくらい謝っていたとしたら……。昔のことを思い出すあまり、”親心”で家に招き入れてしまうこともあったのかもしれません。その挙げ句の犯行だとしたら、尾崎さんはさぞかし無念の気持ちを持っていたでしょう」
象印マホービン元副社長 “総資産100億円”の孤独生活
12月1日、大阪府堺市の自宅で倒れているところを発見された象印マホービン元副社長の尾崎宗秀さん。ラップのようなもので顔を覆われ、手足は縛られていた彼は病院に運ばれるも、間もなく死亡。享年84、死因は窒息による酸素欠乏だった。なぜ彼は事件に巻き込まれてたのか。30年来の付き合いのあった、自治会会長の森昌弘さんが語った――。
東大を卒業後、旧三和銀行に入社。その後、象印マホービンに迎え入れられ、副社長になった尾崎さん。エリート街道を歩んできた彼の資産は莫大なものになっていたという。
「賃貸マンションなどの不動産をいくつも所有していましたし、自宅には重要無形文化財の結城紬や有価証券、掛軸や絵や宝石までお持ちでした。あれだけのものを持っていて、20億や30億ではすまんでしょう。全部合わせると、100億円はくだらなかったと思います」
発見された自宅も地元では有名な豪邸だった。2階建てで16部屋はあるというその家に、尾崎さんは一人で住んでいた。
「3年ほど前に奥さんが脳内出血を起こし、認知症の症状も出始めたんです。それで尾崎さんは奥さんを介護老人ホームに入所させることにしたそうです。お子さんはいらっしゃらいませんでした」
自宅から30〜40分ほどの距離にあった妻の老人介護施設に、尾崎さんは週に何度も通っていたという。夫人を見舞ったことがあるという、森さんの奥さんはこう語る。
「ご主人は奥さんに近況を事細かに話されていましたね。奥さんは楽しそうに聞いていました。ある日、奥さんが楽しそうにしているので、『どうしたんですか?』と聞いてみたんです。すると、『今日、主人が来てくれる日なのよ』と笑顔で答えていました」