昨年12月16日、長崎県西海市の山下誠さん(58)方で、妻の美都子さん(当時56歳)と母の久江さん(同77歳)が刺殺され、
長崎県警は山下さんの三女(23)の元交際相手の筒井郷太容疑者(27)=鑑定留置中=を殺人容疑などで逮捕。
筒井容疑者は千葉県習志野市に住んでいた三女と昨年2月ごろ交際を始めたが、三女宅に居座って暴力を振るうようになった。
山下さんは同10月30日に三女を長崎県の自宅に連れ戻したが、筒井容疑者のストーカー行為について千葉県警習志野署など千葉、三重、長崎の3県警に相談や通報を重ねた。
同署は別事件の対応を理由に被害届受理を先送りし、担当者らが12月8日から2泊3日で北海道旅行していたことが発覚した。
千葉県警本部長ら21人処分 長崎ストーカー殺人事件
2人が殺害された長崎ストーカー殺人事件で、千葉県警習志野署が被害届の受理を先送りし、担当幹部らが慰安旅行に出かけた問題で、県警は23日、旅行の捜査への影響を認める再検証結果を公表した。
当初の検証で旅行に触れなかった理由として、捜査への影響を過小評価し、国民の視点が欠けていたとしている。警察庁と千葉県警は、鎌田聡県警本部長ら計21人を処分した。
県警の再検証は、筒井郷太容疑者=殺人容疑で逮捕=が同県習志野市の女性の自宅に現れ、その後習志野署に出頭しながら、逮捕せずに帰した昨年12月9日と、
生活安全課長らが慰安旅行に出掛けた時期(12月8〜10日)が重なっている点を重視。
女性からストーカー被害の相談を再三受けていた生活安全課長と、傷害事件の被害届を1週間遅らせるよう依頼した刑事課の強行係長が旅行に参加していなければ、
傷害容疑での逮捕やストーカー規制法の適用でより踏み込んだ対応が可能だったなどとして、「署全体として最大限の対応をとる努力がなされれば、結果の発生は回避できた可能性があったと言わざるを得ない」と結論付けた。
この国で誰が筒井郷太のような危険人物から命を守ってくれるのか
長崎県西海市の山下誠さん(58)方で母の久江さん(77)と妻の美都子さん(56)が殺害された事件で、山下さんが27日、心境などをつづった文書を報道機関に寄せた。
殺人容疑などで逮捕された筒井郷太容疑者(27)(三重県桑名市霞町1)が三女に繰り返していた暴力について、千葉県警から被害届の提出を「1週間待ってほしい」と言われたことなどを明かした。事件はその10日後に発生。山下さんは「この国で、だれが筒井容疑者のような危険人物から命を守ってくれるのか、今も分からずにいる」と不信感をあらわにした。
山下さんは、報道各社が弁護士を通じて提出した質問書に文書で回答した。
それによると、千葉県に住んでいた三女のマンションに筒井容疑者が押しかけ、壁をたたくような音がするとして、隣人から不動産業者に苦情が寄せられていた。三女と連絡が取れなかったため、同県警習志野署に通報。三女の勤務先の上司らは10月30日、署員とともにマンションの部屋に入った。その場にいた筒井容疑者は任意同行され、「三女には、もう近づきません」との誓約書を書いた。
しかし、山下さんが西海市の自宅に三女を連れ帰ると、筒井容疑者は三女の友人や職場の同僚に「三女の居場所を教えなければ殺す」と脅迫するメールを送るようになった。山下さんは筒井容疑者の両親に携帯電話やパソコンなどを取り上げるよう依頼し、三重県警桑名署にも筒井容疑者の実家を巡回するよう求めた。三女は今月初旬、習志野署に「(傷害事件について)被害申告したい」と電話。同署は「いつでもいい」と回答し、三女と山下さんは6日に訪れたが、同署は「1週間待ってほしい」と告げた。2人が三女宅で待機していると、筒井容疑者が訪ねてきたり、周辺を徘徊はいかいしたりしていたという。
山下さんは「私が筒井容疑者を捕まえるしかなかったのかと思う。警察からは(筒井容疑者に)『手を出すな』と言われたが、『黙って殺されろ』と言われたのと同じ」と主張。筒井容疑者を死刑にするよう求め、「今の法律では一般市民の生命を守ってくれない」と法整備を訴えた。
(2011年12月27日23時22分 読売新聞)
「親睦旅行 捜査に影響」千葉県警本部長「被害者の視点 欠落していた」
北海道への親睦旅行発覚から1カ月を経て、千葉県警はこれまでの対応を一転、親睦旅行による捜査への影響を認めた。昨年12月、長崎県西海市の山下久江さん=当時(77)=と美都子さん=当時(56)=の2人が犠牲になった長崎県ストーカー殺人事件。会見した鎌田聡本部長(55)ら幹部は「旅行の事実が遺族や国民にどう映るのか、思いが至らなかった」などと謝罪を繰り返した。
鎌田本部長は冒頭、用意した書類に視線を落としたままコメントを読み上げ頭を下げた。警察署全体が最大限対応していれば事件を回避できた可能性を認め、「私自身が遺族の立場であれば、旅行は一体何だと思うだろう。当然の視点が欠落していたのは真摯(しんし)に反省すべきだ」と神妙な表情で話した。
約20分間の会見の大半は再検証結果の朗読に費やし、記者の質問に答えたのは3回だけだった。
県警トップとして、国家公安委員会訓戒という異例の処分を受けた自らの進退については「重い教訓を背負った。警察が前進できるよう、その環境づくりに微力を尽くしたい」と述べるにとどめた。
再検証をめぐって、遺族の一部が求めた第三者機関による検証を県警が受け入れなかったため、信用性が疑問視されているが、鎌田本部長は「信用できないという声は重く受け止めているが、最善を尽くしており万全の検証」と理解を求めた。
この点について、鎌田本部長に続いて会見した再検証担当の岡部正勝警務部長(46)に質問が集中。「国民目線の公安委員会からチェックを受けている」として第三者の検証は不要との考え方を示し、「理解いただきたい」と繰り返した。
再検証では、山下誠さん(58)の三女にストーカーを繰り返していた無職、筒井郷太容疑者(27)=三重県桑名市、鑑定留置中=を習志野署に出頭させたにもかかわらず、筒井容疑者の逮捕を見送った昨年12月9日に焦点が当てられた。
3日前の同6日に被害届の受理を先送りにした同署刑事課係長とストーカー規制法を担当する生活安全課長に対し、「2人に捜査を遅らせる意図は認められない」とした上で、「旅行に参加していなければ、9日の時点で逮捕や同法の警告など踏み込んだ対応ができた」などと指摘した。
「旅行の参加が捜査に影響を及ぼさなかったとはいえない」と歯切れの悪い表現にとどめた理由について、岡部警務部長は「検証は仮定の状況を検証しており、微妙な判断だった」と説明した。
また、本部のストーカー対策担当者ら9人も同時期に旅行に出かけていたことも判明、再検証で「対応が不十分」とした。
同署には昨年11〜12月上旬、5回の被害相談があったにもかかわらず、受理した署員が「警察安全相談受理票」の作成を怠り、署長らに報告もしていなかった事実も明らかにされた。
(2012.4.24.産経ニュース)
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