箱男
The Box Man
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安部公房
発行日 1973年3月30日
新潮社
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これは箱男についての記録である。
ぼくは今、この記録を箱のなかで書きはじめている。
頭からかぶると、すっぽり、ちょうど腰の辺まで届くダンボールの箱の中だ。
つまり、今のところ、箱男はこのぼく自身だということでもある。
箱男が、箱の中で、箱男の記録をつけているというわけだ
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安部公房 小説を生む発想 「箱男」について 1
安部公房 小説を生む発想 「箱男」について 2
安部公房 小説を生む発想 「箱男」について 3
安部公房 小説を生む発想 「箱男」について 4
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箱男
都市には異端の臭いがたちこめている。人は自由な参加の機会を求め、永遠の不在証明を夢みるのだ。そこで、ダンボールの箱にもぐり込む者が現われたりする。かぶったとたんに、誰でもなくなってしまえるのだ。だが、誰でもないということは、同時に誰でもありうることだろう。不在証明は手に入れても、かわりに存在証明を手離してしまったことになるわけだ。匿名の夢である。そんな夢に、はたして人はどこまで耐えうるものだろうか。
— 安部公房「著者のことば」
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