<狭山虐待死>同居の男に懲役12年6月 地裁「無慈悲かつ卑劣」
埼玉県狭山市で昨年1月、藤本羽月ちゃん=当時(3)=が顔にやけどを負わされたまま放置され死亡した虐待事件で、保護責任者遺棄致死や傷害などの罪に問われた、無職大河原優樹被告(26)の裁判員裁判の判決公判が25日、さいたま地裁で行われた。高山光明裁判長は「無慈悲かつ卑劣」と懲役12年6月(求刑・同13年)を言い渡した。傷害罪は「犯人性が証明されていない」として無罪を認定した。
シャワーの熱湯で羽月ちゃんにやけどを負わせたとして起訴された傷害罪について、大河原被告は「自分はやっていない」と一貫して否認。証人出廷した藤本彩香被告(24)=保護責任者遺棄致死罪などで起訴=は「大河原被告がお湯をかけているのを見た」と証言し、双方は真っ向から対立していた。
判決で高山裁判長は、藤本被告の証言について「疑問が残り、信用できない」として「犯罪の証明がない」と無罪を結論付けた。
一方、判決は約4カ月にもわたる虐待行為を「無慈悲かつ卑劣で極めて悪質。同種事案の中でも最も重い」と指弾。
弁護側が「大河原被告は主導的ではなく、役割は藤本被告より大きくない」としていた点については、「責任は藤本被告よりも重いとは言えない」としたものの、大河原被告が虐待の大部分を実行し、積極的に関与している点が認められることから「刑事責任が重いことに変わりはない」とした。
判決によると、藤本被告と共謀して、昨年1月8日夜、十分な栄養が与えられずに低栄養状態に陥っていた全裸の羽月ちゃんに対し、冷水をかけて9日未明まで放置し、免疫力低下による敗血症で死亡させるなどした。
さいたま地検の葛西敬一次席検事は「判決内容を精査し、適切に対処したい」とコメントした。
(埼玉新聞 2017.5.25)