壮絶いじめ、これが「消防学校」の実態とは…卑劣なファイヤーマンたち
和歌山県消防学校で、初任科生の男性消防士(19)にアイロンを押し当てやけどを負わせたとして、和歌山東署は7月18日、傷害容疑で同県橋本市消防本部の元消防士、森田大翔容疑者(21)を逮捕した。学校のその後の調査で、いじめは複数人が関わり、常態的に行われていたことが判明。悪質な行為の数々に、学校の管理態勢が問われている。
森田容疑者は7月10日午後6時45分ごろ、学生寮の部屋で熱したアイロンを手に持って男性消防士にスチームを吹きかけ、さらに逃げ出した男性消防士を追いかけ、右肩にアイロンを押し当て8日間のやけどを負わせたとして逮捕された。
学校によると、森田容疑者は今年4月に同消防本部に採用され、消防学校に入学。5月ごろから7月にかけて男性消防士の体を殴ったり、太ももを蹴ったりするいじめ行為を繰り返した。デッキブラシで殴ったり、ブラシを押しつけたりする行為もあったという。
アイロンを押し当てた行為について森田容疑者は「ふざけていて、やけどさせるつもりはなかった」と説明したが、いじめは次第にエスカレートしていたようだ。
学校側のその後の調査で、この消防士を含む5人が森田容疑者からいじめを受けていたことが判明。さらにいじめに加担したり、行為を止めずに放っておいたりした仲間が複数いたことも分かった。
学校は、このうち同じ橋本市消防本部の男性消防士(20)について、森田容疑者がいじめをするそばで笑ったり、けしかけたりするなどしたとして、謹慎3日の懲戒処分とした。この消防士は7月、消灯後に男性消防士の部屋に入り、顔にひげそり用のクリームを塗りつけるなどの嫌がらせをしたという。
さらに、森田容疑者と行動をともにしていた18〜22歳の男性消防士7人についても、いじめ行為や暴力行為を止めず、教職員に報告しなかったとして厳重注意とした。
学校側は、男性消防士がアイロンでやけどを負ったことからいじめを知ったが、それまでは被害者、加害者が複数いて日常的にいじめが行われていたにも関わらず、気付かなかったという。学校幹部は「深く反省している。人を助けるのが消防士の本来の仕事であり、再発防止に全力で取り組む」と話した。
消防学校は、消防士などに必要な能力を身につけるための訓練を行う施設で、同消防学校には県内の消防本部から4月に採用された52人が入校。全寮制で、半年間の日程で初任教育を受けていた。
逮捕者まで出た今回の事件に関係者はショックを隠せない。
「これから第一線に飛び出し、住民の安全を守る者の行為とは思えない。取り巻きも見て見ぬふりをせず、事実を伝える勇気を持ってほしかった」
同県内の40代のベテラン消防士は、新人たちの許しがたい行為にこう憤る。
学校は、アイロン事件が起きた翌日の7月11日に全校生から聞き取り調査を実施。悪質性を考慮し、14日にいじめ行為があったと報道発表、16日に和歌山東署に刑事告発し、22日に森田容疑者を退校処分にするなど異例の早さで対処した。
また再発防止策として、学生との面談や生活指導を通して学生の状況把握に努めることや、巡視の強化、相談窓口の設置などを決めた。
しかし、県民の命を守るプロを養成する学校で起きた事件だけに影響は大きく、学校に加え橋本市消防本部の管理態勢についても、徹底した検証が求められている。
(産経新聞 8月11日)