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インド、高齢者5割に虐待被害

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インド、高齢者5割に虐待被害=家族、壊れる絆―

「息子が結婚するまでは平和だった」。プレム・ラタさん(65)は湾曲した背をさらに深く曲げ、とつとつと語り出した。
ニューデリー市内の自宅で息子夫婦と同居する。孫も生まれ、楽しい老後を過ごすはずだった。
 
◇「邪魔だ」
異変が起きたのは、夫が他界した10年前。息子は毎晩のように酒をあおり、ラタさんに「邪魔だ」「死ね」と暴言を浴びせるようになった。
家族そろっての食卓には自分の皿が並ばない。「孫には石を投げられた。なぜ血のつながった家族からこんなひどい扱いを受けるのか」。
悲しみで声が詰まり、背中が震える。
 
◇虐待が倍増
高齢者支援団体「ヘルプ・エージ」の2014年版調査によると、高齢者の5割が家族から暴言、暴行、ネグレクトなど虐待を経験。前年の調査における「虐待を受けたことがある」との回答率(23%)を大幅に上回った。
同団体の最高経営責任者マシュー・チェリアン氏は「高齢者の多くは成人した子供から単なる『資産の所有者』として扱われている」と指摘した。虐待の背景には「家族の絆を大切にする価値観の崩壊と、経済成長に伴う拝金主義のまん延がある」と分析している。
 
◇高齢者扶養法
インド政府は07年、親および高齢者の扶養と福祉法を成立させた。同法は資産を相続する子に親の扶養義務があると規定。義務を果たさない場合には最大で3カ月の禁錮あるいは5000ルピー(約9500円)の罰金を科し、地区裁判所に虐待事案の調停機関を設置した。
調停委員のキルティ・ベルマさんは「老人ホームが不足する中、多くの高齢者は虐待被害を届け出れば帰る場所がなくなると恐れている」と話す。法律で家族関係を縛ることに強い反発もある。それでもニューデリーの調停機関には、月100件以上の新しい虐待案件が持ち込まれる。
ラタさんも3カ月前、調停を申し込んだ。数回にわたる調停の末、息子が月3000ルピー(約5800円)の扶養費を支払うことで和解した。「本当はお金の問題じゃない。ただ、家族みんなで平穏に暮らしたい」。急速な経済発展の陰で、変わりつつある価値観と家族の在り方に翻弄(ほんろう)されるインドの高齢者。その頬を涙が伝った。 

(時事通信 12月28日)

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