三鷹ストーカー殺人
23歳被告に懲役22年 差し戻し審
東京都三鷹市で2013年、元交際相手の女子高校生(当時18歳)を殺害したとして
殺人罪などに問われた無職、池永チャールストーマス被告(23)の差し戻し審の裁判員裁判で、
東京地裁立川支部(菊池則明裁判長)は15日、遺族の告訴を受けた児童ポルノ禁止法違反などの追起訴を適法と認め、
差し戻し前の1審と同じ懲役22年(求刑・懲役25年)の判決を言い渡した。
被告が高校生の画像をインターネットのサイトに投稿した行為は「リベンジ(復讐=ふくしゅう)ポルノ」と呼ばれて社会問題化したが、
検察側は当初この行為を起訴しなかった。
差し戻し前の1審は「殺害と密接に関連する」と重視して懲役22年としたが、
東京高裁が「起訴されていない罪で実質的に処罰した疑いがある」と審理を差し戻した。
差し戻し審では、検察が投稿行為を高裁判決後に追起訴したことの適否が争点となり、弁護側は「公訴権の乱用で違法」と主張した。
判決は、高校生の名誉が傷つくことを恐れて告訴しなかった遺族が、
差し戻し審の量刑判断に画像投稿行為が反映されなくなることを危惧し、処罰を望んで告訴したと指摘。
「被害者側の意向は当然考慮されるべきであり、遺族の意向が変化した経緯を踏まえれば、追起訴が違法とはいえない」と判断した。
その上で「不特定多数に画像が閲覧され、被害者の尊厳を甚だしく傷つけた」と指摘し、
事件の動機を「被害者の全てを奪い徹底的におとしめるという身勝手かつ理不尽なものというほかない」と非難した。
一方で「不十分だが被告なりの反省の態度を示している」と述べた。
判決によると、池永被告は13年10月8日午前、三鷹市の高校生の自宅に侵入。
同日夕、高校生の首や腹を所持していたナイフで刺して殺害した。
また、同年7~10月、高校生の画像13点をサイトに保存し、10月6日と8日にネット上でサイトのURLを公開、
不特定多数の利用者が閲覧できる状態にした。
被告の弁護人は「控訴するか被告と話し合って決めたい」とのコメントを出した。
◇
高校生の両親は閉廷後、代理人弁護士を通じ
「懲役22年では、追起訴の画像投稿行為をきちんと処罰したことにはなりません。告訴というつらい選択をした私たちには全く納得できません」
とのコメントを出し、検察側に控訴するよう求めた。
弁護士によると、極刑を求めていた両親は、公判中かなり疲れた様子で、体調が悪くなったこともあった。コ
メントには「現在の法制度の下では、私たちの納得できる判決は得られないでしょう。被告に対する裁きは神の裁断に委ねます」とも記されていた。
弁護士によると、判決後、父親は「せめて懲役22年は超えてほしかった」と話したという。
また、裁判員6人と補充裁判員2人が記者会見し、被告の画像投稿行為を厳しく批判した。
20代の男性補充裁判員は「被害者も被告を信じて送ったと思う。
被害者の気持ちを考えるとショックだ」と話した。
60代の男性裁判員は「画像がインターネットに流出している事件を社会全体で減らす意識を強める必要がある」と強調した。
事件を受けて「リベンジポルノ被害防止法」が2014年に成立し、
画像を不特定多数に提供すると3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるようになった。
◇
判決は画像投稿行為の追起訴を適法と認めつつ、量刑を差し戻し前の1審と同じ懲役22年とした。
差し戻し前の1審判決を尊重しつつ、遺族の処罰感情を最大限にくみ取った結論といえる。
差し戻し後の異例の追起訴に、弁護側は「公訴権の乱用」と反発したが
判決は「違法とは到底いえない」と退けた。遺族の思いを踏まえれば自然な判断だろう。
今回の事件では、差し戻し前の懲役22年の判決に対して検察は不服を申し立てず、被告側だけが控訴した。
こうしたケースで被告に不利な方向に判決を見直すことは法律上許されない。
このため、もともと無期懲役を求めていた検察側は今回、22年に追起訴分の3年を加えて懲役25年の求刑にとどめた。
判決はこれを「やや重過ぎる」とし、差し戻し前と同じ量刑を導き出した。
リベンジポルノの告訴という重い決断をした遺族は、この判決に到底納得できないだろう。
差し戻し前の審理のあり方や、控訴を見送った検察の判断は適切だったのか。
審理を差し戻した高裁判決にどのような意味があったのか。検察や裁判所には、より丁寧な説明が求められている。
(毎日新聞2016年3月15日)
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