「外国人が意味の分からないことを言っている」熊谷6人殺害ナカダ・ルデナ容疑者 2015年9月
熊谷連続殺人事件(2015年9月14日及び16日)
ペドロ・パブロ・ナカダ・ルデニャ( Pedro Pablo Nakada Ludeña, 1973年2月28日 - )
ペルー人のシリアルキラー。 通称「死の使徒( "El Apóstol de la Muerte" )」「死の使者」。
2000年から2006年にかけてペルーで25人を殺害し、
うち17人について有罪が立証され、35年の禁固刑が宣告された。
ペルー史上最大の殺人犯である。懲役35年で服役中。
Pedro Pablo Nakada Ludeña
ペルー人・ナカダ容疑者が頭部の手術で別人に!
奇声・奇行はなくなったが「私はやっていない…」
埼玉県熊谷市の3民家で6人が殺害された悲惨な事件から3カ月余り。殺人容疑などで逮捕され、空腹になると叫び声を上げていたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン容疑者(30)は、頭部の手術を受けると奇行が別人のように収まったという。しかし供述は変わらず「私はやっていない」-。質問以外のことはペラペラと話し現在、鑑定留置中のナカダ容疑者。事件の「今」を「けが」「姉」「ペルー人」の3つのキーワードで読み解いた。
母子3人が殺害された家の2階窓から転落したところを身柄確保されたナカダ容疑者。熊谷市内の病院に入院したが、10月8日に回復したとして退院し、殺人容疑などで逮捕された。 当初から「事件のことは知らない、分からない」と容疑を全面否認。それどころか、空腹時に大声をあげるなどの奇行が目立った。
「『怖いから早く退院させてほしい』という深谷の病院の看護師たちからの声がかなりあったことも少なからず影響しているようだ。6人殺害犯が院内にいることが嫌だったのだろう」。捜査員はそう振り返る。
実は、最初の退院の時点で、ナカダ容疑者の回復は不十分だった。接見した弁護人に「左目が見えない」「顔がしびれている」などと訴え、検査すると目の奥を骨折して鼻から髄液が漏れている状態。10月15日に再入院し、22日に髄膜炎を予防するための頭部手術を受けた。捜査関係者によると、手術後、ナカダ容疑者の奇行はなくなったという。
「痛みがなくなっておとなしくなったのでは。ペルーにいたら、こんなちゃんとした手術受けられなかったと思うよ」。捜査関係者は皮肉交じりに話すが、退院後に再逮捕されたナカダ容疑者が発した言葉は、「嘘です」「私はやっていない」-。と手術前と変わることはなかった。
「手術を終えたら何か変わるかもしれないとちょっと期待したんだが…」。捜査関係者はそうつぶやく。
県警はナカダ容疑者の情報を集めようと、ペルーの行政機関を通して捜査依頼などを行ったが、手続が煩雑なため難航した。その上、12月のペルー国内はクリスマス休暇に突入して思うような反応が得られない。しびれを切らし、ナカダ容疑者の姉を日本に呼び寄せ、約2週間にわたり事情を聴いた。
ナカダ容疑者とは画像共有サービス「インスタグラム」などを通じて時折やりとりをしていた姉だが、「いかんせん、離れて暮らしていたから、詳しい事情は知らないようだ」(捜査関係者)。新しく分かった事実は、姉が「ナカダ容疑者と同じぐらいよくしゃべることぐらい」だったという。
ナカダ容疑者は当初から、ペルーで大量殺人を犯したとされる兄の話を聞こうとすると家族全員の話を始めたり、聞かれた勤務先とは違う勤務先の話を延々と語ったりして捜査関係者を困らせていた。
「ペルー人の特徴なのか、本人の性質なのか、聞いた質問以外のことをたくさんしゃべる」と首をひねっていた捜査関係者は、姉からの聴取を終えて「あれはペルー人の特徴ではなくて、あの家族の特徴だ」。
ナカダ容疑者は現在、鑑定留置中だが、6人もの人が犠牲になった凶悪事件。捜査本部は地道な裏付け捜査を続けており、事件の全容解明に全力を挙げている。
事件は熊谷市の地元住民だけでなく、日本で生活するペルー人にも大きな衝撃を与えた。
約25年前から同県川越市で生活する和島エレナさん(38)は、事件当日にニュースを見て目を疑った。どのチャンネルやサイトを見ても「ペルー人が殺人」「ペルー人の凶行」という文字が躍る。「とてもショックを受けたし、初めて自分がペルー人だということを『恥ずかしい』と思いました。今まではずっと誇りに思ってきたのに」と表情を曇らせる。同時に「アメリカ人や中国人が同じことをしたとしても、ここまで『どこの国の人間か』が騒ぎになっただろうか」と疑問も残っている。
インターネット上の中傷にも傷ついたが、高校生の長女の行動に救われたという。
「いま玄関の鍵開いててママが『鍵開いているとペルー人入ってくるよ~』って(笑)」。ツイッターで見つけたこの書き込みに対し、長女は「日本でペルー人が人殺したらペルー人みんな悪いの?って事は、日本で日本人1人が誰か殺したら日本人みんな殺人犯って事と同じですけど?ふざけんなーw」と返した。相手からの返答はなかったという。
「ただ、長女のようにハートの強い人ばかりではない。何も言い返せず泣き寝入りをしている人もいる」とため息をつく。
「私の周りは優しい人ばかりで『エレナは何も悪くないんだから』と言ってくれるが、それでも同郷の人間として心は痛む」とエレナさん。「家族を失う辛さはどの国の人間も変わらない。ナカダ容疑者には遺族のためにも本当のことを話してほしい」と強く訴えた。
【熊谷6人殺害事件】9月14日午後6時ごろ、埼玉県熊谷市見晴町の民家で住民の田崎稔さん(55)夫婦が刺されているのが見つかり、その後死亡した。16日午後5時前には同市石原の住宅で白石和代さん(84)の遺体が発見。同5時半過ぎに、近くの加藤美和子さん(41)方の2階からナカダ容疑者が転落し、埼玉県警が確保すると、家の中で加藤さんと小学生の娘2人の遺体が発見された。被害者らはみな刃物で刺され絶命していた。埼玉県警は10月8日、田崎さん夫婦の殺人容疑などでナカダ容疑者を逮捕し、11月25日までに6人全員の殺人容疑で逮捕した。ナカダ容疑者は現在、鑑定留置中。
(2015.12.26 産経ニュース)
脈絡なき供述、空腹時の奇声…ナカダ容疑者の取り調べ難航 「もう限界…」と捜査員ら
食事がなくなると大声を出し、取り調べ時間は通常2倍、スペイン語の通訳担当の捜査員は疲れ切った-。埼玉県熊谷市で9月14~16日、小学生を含む6人が殺害された事件で、50代の夫婦殺害などの容疑で逮捕されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン容疑者(30)が、捜査本部を振り回している。逮捕後から否認を続け、再入院中の10月22日には髄膜炎予防のため頭部手術を受けており、今後の取り調べのメドは立っていない。3軒の民家で起きた重大事件の立件に向けて、埼玉県警の懸命の捜査が続く。
「ペルー人の特徴なのか、本人の性質なのか、聞いた質問以外のことをたくさんしゃべる」
捜査関係者はそう顔を曇らせる。再入院前の取り調べには素直に応じていた。しかし時折、「おなかがすいた」「食事が足りない」と意思表示をすることもあり、特に空腹時にはいらだった様子で大きな声をあげたという。
質問への答えは要領を得ず、事件直前の勤務先を聞くと別の勤務先の話をしたり、ペルーで大量殺人を犯したとされる兄の話を聞こうとすると、家族全員の話を始めたりする。逮捕当日、被害者宅から転落する前に自らがつけた腕の傷について尋ねても「分からない」と答えたという。
「主張したいことがあっても言葉が違って難しいから、そうなってしまうのかもしれないが…」と捜査員が漏らすように、取り調べはスペイン語で行われる。県警本部からスペイン語が堪能な捜査員が通訳として参加するが、通常の取り調べの2倍の時間がかかるという。
取り調べが夜間に及ぶこともあり、夜間の対応を引き受ける民間の事業者がほとんどないため、数少ない捜査員が「体力的にも、精神的にも限界に近い状態」(捜査幹部)で行っている。通訳担当の屈強な捜査員が弱っている姿に、他の捜査員が「もうすぐだから」と慰める場面もあったという。
ナカダ容疑者がこのまま「事件のことを知らない」と主張し続けた場合、困難が予想されるのが犯行時のナカダ容疑者の心理や動機の解明だ。
ナカダ容疑者は9月12日、登録していた人材派遣会社の担当者に「背広を着た人間に追われている。会社に行けない」などと話した後、群馬県伊勢崎市の勤務先を無断欠勤した。別の知人にも「誰かに殺される」「追われている」などと話していたことが分かっており、心理的に不安定な状態だった可能性がある。
最大の謎は動機だ。被害に遭った3軒全てで、金品を奪われた形跡は確認されていない。その代わり、家族以外の何者かが飲食をした形跡が残されている。ナカダ容疑者は食事にありつくために3軒を渡り歩き、遭遇した家人を殺害した可能性がある。
田崎さん夫婦方には血で書いた文字のようなものが残されていたが、上から拭き取ったような跡もあり、県警も判読はできなかった。しかし、白石さんの遺体は風呂場の中、加藤さん母娘3人はクローゼットにそれぞれ隠されたような状態で発見されており、証拠隠滅の意図があった可能性はある。転落の直前に十字を切り自らの腕を切りつけたのも、自殺を図ったのか、誤って転落したのか不明だ。
多くの謎が積み重なる事件だが、県警は着実に物証を積み重ねている。
被害にあった3軒からはナカダ容疑者の靴に酷似した足跡が採取され、唾液などの遺留物からはナカダ容疑者のものと一致するDNA型が検出された。田崎さん夫婦が刺殺された後で乗り捨てられていた夫婦の車のカギが白石さん方から発見されるなど、3軒の犯行を結ぶ「点と線」は着実に明らかにされつつある。
意味の分からない供述も、捜査関係者は「専門家によって考え出された方法で質問すれば、記憶が本当に失われているのかそうではないのか確認できる」と話し、さらに「物証だけでもいけるのでは」と自信を見せる。
とはいえ「現在逮捕されている田崎さん方での殺人以外の2つの殺人で再逮捕。その後は精神鑑定が必要になるだろう。もし再入院中に手術となればさらに時間がかかる」と捜査関係者は起訴に向けて長期戦を覚悟する。
さらに裁判も長期化する恐れが出ている。法曹関係者は「これだけ社会的に大きな事件では、被告側に就く弁護士も死刑を回避できるよう万全の体制を組み、全力で戦うつもりだろう」と指摘する。
加藤さん母娘3人の親族は9月21日、「家族を突然失い途方に暮れています。この先、今まで通りの普通の生活ができなくなることを考えると、無念でなりません」との思いをつづり、県警を通じて発表した。
捜査関係者は「われわれの仕事は被害者と遺族のため、全力で事件の全容を解決することに尽きる」と、話すが、ある捜査幹部はより強い言葉で決意を語る。
「容疑者にはできる限りの厳罰を与えたい。死刑にするつもりだ」
(2015.10.28 産経ニュース)
「気がついたら病院にいた」 凶行の動機、血文字…残された謎解けるか
「仕事をしていて、気がついたら病院にいた」「事件のことは知らない、分からない」。捜査関係者によると、ナカダ容疑者は8日に逮捕された後、捜査本部の取り調べに対し、こう繰り返したという。逮捕により捜査は大きく進展したが、容疑を客観証拠で裏付けることに加えて、小学生の女児まで手にかけた凶行の動機や、現場にあった血文字の意味など、残された謎を解けるかが今後の捜査の焦点となる。
捜査本部によると、ナカダ容疑者はスペイン語の通訳を通じて、家族のことや滞在した日本の地名について話すなど、取り調べには素直に応じているという。
全面否認について捜査関係者は「事件前後の記憶が飛んでいる可能性があり、医者と相談しながら調べを進める。知らないふりをしているのかはまだ分からない」と慎重な姿勢を示す。
一方、捜査本部による証拠収集は着実に進められている。6人が殺害された3住宅にはナカダ容疑者のものと酷似した足跡がそれぞれ見つかっており、さらに全ての住宅で飲食の形跡が残され、ナカダ容疑者のものと一致するDNA型が検出された。勤務先があった群馬県伊勢崎市から埼玉県熊谷市に至る足取りについても防犯カメラの映像などからほぼ明らかになっている。
しかし、9月13日に熊谷署から逃走した後の足取りは不明な点が多く、3住宅では金品が奪われていないなど荒らされた形跡がないため、殺害の動機は明らかになっていない。田崎さん方の壁には血で書いた文字のようなものが残されていたが、判読は不能。捜査関係者は「いずれ精神鑑定が必要になるのでは」と語った。
(2015.10.9 産経ニュース)
「世界を浄化するため売春婦ら殺した」容疑者の兄は17人殺した“死の使徒”
埼玉県熊谷市の3住宅で計6人が殺害された事件で、ナカダ容疑者の実兄が、ペルーで大量殺人事件を起こし、現地で“死の使徒”と大きく報じられた服役囚であることが17日、分かった。(サンケイスポーツ)
ナカダ容疑者は10人兄弟の末っ子で、服役中の兄は上から4番目のペドロ・パブロ服役囚(42)。2005~06年に計17人を拳銃で射殺するなどしたとして、07年に懲役35年の刑が確定、服役している。
妄想型統合失調症を患っていたとされ、殺人の動機を「世界を浄化するために、神の命令で薬物中毒者や売春婦、同性愛者らを殺した」と供述。実際に殺害したのは25人とも明かした。自身の生い立ちについて、幼いころから家族に虐待され、兄たちから性的虐待を受けたとも語ったという。
フジテレビの電話取材に応じたペルーに住むナカダ容疑者の姉は「弟は日本に行って精神的に病んでしまった。『誰かに追いかけられている、自分は殺される』と言っていた」と話した。姉によると、ナカダ容疑者は兄の殺人を目撃して、精神的にショックを受けていたという。
(2015.9.18 産経ニュース)