神戸女児殺害、死刑破棄し無期懲役判決 大阪高裁
神戸市長田区で2014年に小学1年の女児(当時6)を殺害したとして、
殺人やわいせつ誘拐などの罪に問われた君野康弘被告(50)の控訴審判決で、
大阪高裁(樋口裕晃裁判長)は10日、求刑通り死刑とした一審・神戸地裁の裁判員裁判の判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。
判決は「一審は生命軽視の姿勢を過大評価しており、公平の観点からも死刑を許容しうるとは言えない」と判断した。
09年に裁判員裁判が始まって以来、強盗目的の事件を除き被害者が1人の殺人で死刑が言い渡された初めての事件で、今回の判断に注目が集まっていた。
高裁判決によると、君野被告はわいせつ目的で14年9月、「絵のモデルになってほしい」と声をかけて女児を自宅に誘い入れ、首を絞めるなどして殺害。
遺体を傷つけて複数のごみ袋に入れ、近くの雑木林に遺棄した。
地裁は動機や犯行の残虐性を重くみて「生命軽視の姿勢が甚だしく極まっており、被害者が1人でも死刑は十分許容されうる」とした。
これに対し、高裁は、犯行に計画性はなく、事前に殺害を準備するケースに比べて「非難が一定程度弱まる」と指摘。
「計画性がないことを軽視し、動機や残虐性などの要素を過大に評価した一審の判断は是認できない」と述べた。
そのうえで「死刑が十分許容されうるとした具体的、説得的な根拠が示されていない」と認定。
犯行は冷酷で残虐▽幼い被害者の命を奪った結果は重大▽遺族の悲しみや怒りは筆舌に尽くしがたい――としながら、
死刑を科せるほど生命軽視の程度が極まっているとは言えないとした。
また高裁は、一審が社会常識を反映する裁判員裁判の判断だった点にも言及。
「控訴審は裁判員裁判の量刑判断を基本的に尊重すべきだ」としつつ、「経験則や法的観点から是正せざるを得ない」と結論付けた。
(朝日新聞DEGITAL 2017年3月10日)
神戸長田区小1女児殺害事件 2014年9月11日 - 9月24日
「黙秘します」君野康弘容疑者(47)2014年09月25日
「殺して、体を触ったりしたい」君野康弘被告(49)2016年3月
君野康弘被告(49)に死刑判決 2016年3月
被告は犯行日と直前3日間だけでも、膨大な回数にわたってアダルトサイトを閲覧。サイトの中には年少の女児を対象としたものもあった。
犯行当日、性的欲求を高めた状態にあり、欲求の対象には年少の女児も含まれていたことが強くうかがわれる。
加えて、それまで人間関係のなかった女児に声をかけ、絵のモデルになってほしいなどと嘘までついて自宅に誘い入れ、
殺害後には遺体の一部を傷つけるという性的な意図をうかがわせる行動もしている。
これらの事実を考えれば、被告が女児に声をかけた時点で、自宅に誘い入れることができれば、
女児の身体を見たり触ったりできるのではないかとの認識を持っていたことは優に推認することができる。
被告は、女児に声をかけたのは女児と話をしたかったからで、自宅で二人きりになったことからわいせつな行為をしたいと思うようになったと述べる。
しかし、話をするだけのために、それまで関係のなかった女児を自宅に招き入れるのは不自然。
自宅で二人きりになることはもともと被告が想定していた事態でもある。
二人きりになって初めてわいせつな行為をしたいと思ったというのは不合理であり、被告の供述は信用できない。
女児を誘拐した際、わいせつ目的があったと認められる。
被告は女児を性的欲望の対象にすべく、自己の支配下に置いた上、生命を奪い遺体をないがしろにした。
殺人を中心とする犯行の中でも極めて悪質な部類だ。
女児と二人きりになったことを意識するうち、わいせつな行為をすれば騒がれ、帰宅させても誘拐が発覚して逮捕されると思い、
帰宅を阻止して犯行の発覚を免れるために女児を殺害しようと決意した。
保身のためだけにとどまらず、性的欲望を満たすことも動機となっており、身勝手さは他に多くの例を見ないほど極まっている。
殺害を決意したのは自宅に誘い入れた後で、殺害に計画性は見られない。
しかし、性的欲望を満たすために女児を誘拐して支配下に置いた上、その状況を利用して欲望を満たすことを動機として殺害に及んだ。
偶発的犯行ではなく、殺意が極めて強固であったことは明らかだ。
殺害に計画性がないことは、被告の刑責を特に軽減すべき事情とみることはできない。