「一体何だ、あの番組は」――。放送終了後、東京・霞が関の警察庁幹部から大阪府警に怒りの電話があったという。
7月27日、NHKスペシャルが「半グレ 反社会勢力の実像」を放送した。番組は大阪・ミナミを拠点とする半グレ集団「拳月グループ」の首領で、元格闘家の「奄美の狂犬」こと相良正幸被告(35=詐欺罪で起訴後、保釈中)と、同幹部で「ミナミのテポドン」こと籠池勇介容疑者(32=恐喝未遂で逮捕)が肩で風を切りながら、夜のミナミの街を闊歩するシーンから始まる。
「半グレグループがしのぎを削る大阪で、2人はミナミの顔として知れ渡っている」というナレーションが流れ、「(籠池容疑者のSNSの)フォロワー数は1万3000人。『仕事を手伝わないか』という呼び掛けに、あっという間に100件を超える申し込みが殺到する」と持ち上げ、半グレ連中の派手でぜいたくな暮らしぶりを伝えていた。
「長官は、こんなもん出しやがって、大阪(府警)は何、半グレの話しとんのや、と怒り心頭やったようや。府警は番組制作には協力したが、まさか半グレ本人が出てくるなんて思わへんし、NHKからも何も聞いてへん。取り締まりの取材やなくて、メインはあいつらやんか。公共の電波を使って、ああいうヤツらに好き放題エラそうにモノを言わせたらアカンわ。アレは半グレ特集やで」(捜査事情通)
籠池容疑者は7月上旬、経営する飲食店の20代の男性従業員が売上金約80万円を持ってこなかったことに激高し、電話で「お前、100万円持ち逃げしたやろ。金返さんかい、コラ。殺すぞ、このボケが。周りを動かさなあかん」とまくし立てた。恐れをなした従業員は「お金をなくしました」と、警察に相談。籠池容疑者は今月26日、恐喝未遂の疑いで大阪府警捜査4課に逮捕された。番組放送から1カ月後のことだ。
「2年前の9月の深夜、相良被告は仲間7、8人とミナミを歩いとった。前から来た車とすれ違いざまボンネットを叩いたら運転手が怒って車から降りてきたんや。そしたら相良被告はいきなり相手に頭突きをくらわせ、1発で失神させ、頭蓋骨を折りよった。続けて運転手の連れの男2人もボッコボコにしばき倒して気絶させ、全員病院送りにした。シノギの取り立てなんかもしとって、ミナミで知らんヤツはおらへん。籠池容疑者も傷害の前科がある」(地元関係者)
NHKは警察庁長官が激怒したことについては「把握していません」とした上で「警察庁、大阪府警から(この件については)問い合わせなどはございません」(広報局)と回答した。
(2019.8.26.日刊ゲンダイ)
半グレ 反社会勢力の実像
2019年7月27日(土)
午後9時00分~9時49分
平成に衰退した暴力団にかわって、勢力を拡大させた犯罪集団「半グレ」。振り込み詐欺や脱法ドラッグ販売など、さまざまな闇ビジネスを展開するために離合集散を繰り返す、暴走族出身者などを指す言葉だ。暴力団と異なり、構成員も曖昧で、事務所などの明確な根城を持たず、暴力団対策法や暴力団排除条例による規制もきかない。犯罪集団とカタギという2つの顔を持つ彼らは、高学歴者を取り込みながら、ネットを使った詐欺など、さまざまな闇のビジネスモデルを構築。そこでもうけた金を土地や株などの正業に投資してさらに肥大化している。番組は東京と大阪を舞台に、半グレの最前線を取材。社会を脅かす、知られざる犯罪者集団の実像に迫る。
テポドン 吉満勇介
拳月 相良正幸
警察庁長官(英:Commissioner General of the National Police Agency)
警察庁の長たる警察官である。その地位については警察法(昭和29年6月8日法律第162号)第16条第2項に規定があり、国家公安委員会の管理に服し、警察庁の庁務を統括し、所部の職員を任免し、及びその服務についてこれを統督し、並びに警察庁の所掌事務について、都道府県警察を指揮監督する。
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